このブログは中途失聴者の主婦Ashley(アシュリー)が作成しています。
このブログでは
「聴覚障害で困ること」、
「聴覚障害があっても出来ること」、
そして、
「聴覚ハンデある人の英語学習例」について書いていきたいと思っています。
”聴覚障害者”と一口に言っても、言語獲得前に失聴した人、言語獲得以降に失聴した人、補聴器や人工内耳で聞き取り可能な人、手話が第一言語の人etc…色々なパターンがあり、それぞれ悩みや困り感も個人差がとても大きいです。ですので、こちらでご紹介する内容が全ての聴覚障害者に合うわけではないことは予めご了承ください。
聴力について
私は数年前に突然聴力を失い、現在の聴力は両耳110db超で、ほぼ何も聞こえません。
残存聴力がほとんどないため、英語どころか日本語も聞き取ることができません。
自分が発する声も分かりません。
補聴器を装用しても、人間の声なのか環境音なのかの区別もできません。
補聴器で”聞こえる”と思っている音も、本当に聴覚的に認識しているのか、
振動で知覚したものを「聞こえた」と錯覚しているだけなのか、自分でも分かりません。
※失聴直後にABR無反応、かつ残存聴力もほとんど無かったため、
失聴直後時点で人工内耳の適応基準を満たしているのですが、
片耳は人工内耳を入れても聴力回復は現実的にほぼ期待できない、
もう片方の耳も持病の影響などで手術が延期になり、常に聞こえない生活で暮らしています。
英語学習の方向性について
私は日本生まれ日本育ち、留学経験もなく、家族に英語を話す人はいません。
学生時代は理系選択で、英語が出来なくてもまったく困りませんでした(笑)
ただ、私が学生だった頃ですら、日本語に訳された専門書は直訳過ぎて意味が分からないものが多く、「英語の原文を読んだほうがマシ」ということは多々ありました。
会社員の頃は英語で対応する場面が多々あり苦労したのですが、
私が実際に対応した方々は
英語ネイティブ1割未満、9割以上が非ネイティブ
という割合で、それぞれかなり個性的な訛りを発揮するので(もちろんこちら側も、、)、
発音の良し悪しよりも根気でコミュニケーションをとる感じでした。
もしこの時に、ちゃんと発音記号で覚えていれば、もっと楽に通じていたかもしれません。
(※非ネイティブの場合、どこの国であっても辞書的な発音記号ベースで発音を教えられるため)
その後、失聴し、最近まで英語からも離れて今に至るのですが、
会社員時代の経験も踏まえて、自分自身の英語学習の方針は
1.「特定地域のネイティブに寄せる」ことは目標にしておらず、
「ネイティブにも非ネイティブにも通じやすい」を目標にする。
2.自分が「書く」「話す」時のベースは教科書英語の延長。
3.日常会話の語彙、表現は「日本の教科書では出てこないけど、ネイティブは子供でも使うもの」から優先的に覚えていく。
4.アカデミック寄りの専門用語語彙はIT、会計分野のみ
上記のように決めています。
世の中にはいろいろな英語学習ハウツーがありますが、発信している人が「どのような英語活用スタイルを想定しているのか」は個人差が大きいので、「自分が英語をどういう場面で使いたいのか」はっきりさせておいたほうが、迷いにくく継続しやすいと思います。
例えば、「英語圏で、飛び込みセールスや接客の仕事に就きたい」という方であれば、教科書英語や発音記号よりも、とにかく現地の人の耳に馴染む話し方習得が優先だと思いますし、アカデミック寄りの語彙はほとんど必要ないと思います。
英語習得の4大ポイント
重度の聴覚障害があっても、聴者と同等に出来ることもありますが、難しいこともたくさんあります。
聴者の言語を習得すること(外国語学習)は、
聴覚障害者にとっては大きなチャレンジの一つだと思います。
言語学習に必要とされる4技能(聞く・話す・読む・書く)の内、
聴覚障害者は「聞く」「(音で覚えて)話す」という部分に大きなハードルがあります。
※このように書くと「聴覚障碍者は読み書きも苦手な人が多い!」という抗議が来るのですが、
私は「聴覚障害者 イコール 読み書き苦手な障害者」とは思いません。
ろう教育が、「聴者の視点で」「聴者基準のカリキュラムで」「聴者になることをゴールにした指導で」なされてきたが故の弊害として、読み書きが苦手になってしまった人が多いと私は考えています。
教科書を決める偉い人たちのカリキュラムに則って、聞こえる人たちも6年以上英語を学んでいるはずですが、大人になっても英語に苦手意識ある人が大多数ですよね?
(私も苦手でした)
ここをどのように乗り越えるか?
私自身も模索中ですが、
何か特別な目新しいことをするわけではなく、
総合的に
「相手に伝わる」
「相手の言葉を読み取れる」
ことを目指して、次の4点を補強しています。
①語彙力を強化
そもそも単語を知らなければ、健聴の人であっても聞き取りも発話も困難なので、語彙力は聴覚関係なく大切です。
相手に言葉が伝わらない時、別の単語で言い換えて伝えたり、表現を工夫するためにも語彙力が必要となります。
②発音・アクセントの認識:発音の誤解を減らす、ビートを掴む
耳で音を確認しながら自分の発音を正す、というのは聴覚障害者には非常に困難だと思います。
中途失聴の私も、聞こえていた頃に身につけられなかった音は今も矯正困難です(改善の努力は続けていますが、、)。
健聴の人であっても『発音を誤解』して、ローマ字読み感覚で発音している人も少なくないはず。
誤解が原因で通じにくくなるのは勿体無いので、より伝わりやすい発音に近づけるよう、私は『発音記号を用いた学習』を取り入れています。
聴力を失ってから英語学習を試行錯誤する中で、私は発音記号は避けては通れないという結論に至りました。英語学習に発音記号は不要(ネイティブは発音記号で覚えないから)という考えもありのですが、聴覚にハンデがある場合、発音記号を使わないのは勿体ないと思います。
※英語圏のろう学校でも、ろう児への言葉の指導に発音記号を取り入れている学校もあるようです。
単語を発音記号とともに覚えると、視覚的に綴りと発音の規則性(phonics)に気付きやすくなるのでオススメです。
また、英語特有のアクセント(ビート)に関しては、習得に聴覚障害の有無は関係ない、むしろ聴覚障害はアドバンテージになるのではないか?と個人的には思っています。
(聴覚障害が重くなるほど他の音情報(メロディ・ハーモニー)に惑わされにくくなるため、相対的にリズム要素を知覚しやすいと言われています)
③文法理解:自然な文法で書く・話す
正しい発音の習得に限界がある前提で、コミュニケーションを補っていくには
「文法をおさえて、明瞭な文章で書く、話す」
ということが大切になってくると思います。
④予測変換スキル
声や文字になった言葉だけでなく、相手の表情・口の形・周囲の状況など、視覚的に読み取れる情報を見ながら、相手が何を言いたいのか予想していく力(予測変換スキル)が聴覚障害者にとっては重要になります。(失聴歴の長い人はこの視覚的な読み取り能力に優れている方が多いです)
さらに今は科学技術の進歩で、音声を文字化してくれるツールが増えており、「音声↔︎手話」変換技術についても既に試用段階まで進んでいます。
私も音声文字変換アプリを毎日使うようになり、とても助かっていますが、アプリの文字化は完璧ではないので誤変換も頻繁に起こります。
相手がどのような文脈で話しているのか、何を言いたいのか、ツールに頼り切るのではなく自分で補っていく必要があります。
リンキングの考え方について
自分自身の学習でも発音記号を使って覚えるようにしていますが、
実際の会話中は『音素単位での正しい発音』まで注意が行き届かないのが現実です(笑)
ですが、口頭のコミュニケーションが必要な場面で
可能な限り「伝わる・読み取る」工夫は必要だと思います。
日本語とは違い、英語には”強弱アクセント”があり、
弱勢アクセント位置では”リンキング”が多発します。
*リンキング:隣り合う単語同士が連結して起こる発音変化
たとえ単語の端から端まで発音記号通りの発音を出来たとしても、
リンキングするべきところでリンキングしなかったり、
控えめアクセントのところを明瞭に発音しすぎると、ネイティブにはぎこちなさを感じさせることがあります。
ですが、相手が非ネイティブや日本語訛りに慣れている人の場合は
「リンキング控えめ、かつ発音記号通りの辞書的な発音」のほうが通じやすい場合もあります。
なので、会話で私自身が気を付けていることは
✓強勢アクセントがくる部分は発音に気を付ける
(音を聞いて改善していくのは難しいので「正しい発音」には限界あり)
✓アクセントが弱くなる部分は、リズムの安定優先に繋げる
(リンキングは控えめ)
…というくらいで、
伝わらなかった時は単語だけを何度も繰り返すのではなく、
他の単語やフレーズに言い換えるなど伝え方を変えるようにしています。
発音記号について
私がワードプレスを選んだ一番の理由は
発音記号と単語を対にしたフラッシュカードを作りやすかったから。です。
自分の学習用に「発音記号と英単語が対になったシンプルなフラッシュカード」を探したのですが見つけられず。
それならば勉強も兼ねて自分で作ってしまおうかと。笑
見慣れない方は難しく感じるかもしれないですが、子音はアルファベットのままのものが多いので、実際に覚える発音記号は26個くらいです。
数をこなせば自然と覚えていくので、興味がある方は試してみてください♪
※私はIPAの発音記号を参考にしています。
※紙の暗記カードや、今は暗記カード系のアプリ(内容は自分で入力が必要)も良いものが沢山ありますので、ワードプレスを使わなくても暗記カード・フラッシュカード自体は簡単に作れます。
読唇術について
聴覚障害があると、
聞こえる方からよく聞かれることの一つが
「読唇できますか?」です。
私はほとんどできません。
(限定的な条件では、少しは読み取れますが
読唇だけで会話するのは不可能です)
誤解されている方がとても多いですが、
「残存聴力」
「発話の程度」
「声の”読み取り”能力」
は必ずしも相関しません。
例えば、中途失聴者の場合は残存聴力がほぼゼロであっても
聞こえていた頃の発話を維持できると言われています(※)が、
聞こえなくなったその日から、いきなり読唇できるわけではありません。
※私に関しては、失聴後に出会った方からは「発話に違和感ない」と言われますが、
失聴前の私を知る人たちからは「声(発声?)がかなり変わった」と驚かれます。
私は声量のコントロールが出来ません。
同様に、発話が明瞭でなくても、聴力が少し残っていたり、
読唇レベルが高い方もいらっしゃいます。
同じ聴覚障害者であっても
どれくらい読唇できるかは個人差が大きく
さらに、
読唇しやすい相手・読唇しにくい相手 の傾向もあります。
私の場合は「主に口形のみで判断」、「喉や息はほぼ読み取れない」、「読唇正解率は0%~30%」とかなり低レベルです。